佐々木正美先生講演会(1/2)
「自閉症支援の夜明け」
場所:横浜ラポール ラポールシアター
日時:2003年5月15日 18時45分ー20時30分
主催:社会福祉法人 横浜やまびこの里 仲町台センター
自閉症の特性がとっさにあたまに浮かぶようでなければ
過去の30年を振り返ると自閉症のことはかなりのことがわかってきたと思う。残念ながら自閉症の原因や治す方法はまだわかっていない。しかし自閉症の人はこういう人であるということはずいぶん理解できるようになってきた。自閉症の人が自分自身のことを語るようになった。
1.目で見える具体的なものでないと理解しがたい
目で見て学ぶ。言葉を理解しているように見えても それを視覚に変えている。言葉の持つきわめて具体的な内容だけを理解している。具体的でないと理解が困難である。(これはとても重要な自閉症の特性)
2.一つのことに焦点が当たる(シングルフォーカス)
一度に一つのことに強い焦点が当たる。一度に複数の事を処理することが出来ない。ある程度話ができる人でも相手の気持ちと自分の気持ちを同時に感じるのは難しい。言葉を話すのと会話ができるのとは違う。 運動でも同じである。トランポリン(飛ぶ)はできるが 縄跳び(飛びながら 同時に腕を動かす)は不得意。
3.想像力が乏しい
目に見えないものを創造することは苦手である。自由時間が苦手である。何をいつまでにどうしたら良いかわからない。何をしたら良いか想像できない。そういうときに不適応行動が多い。優秀な先生は、まず子供に休み時間の過ごし方から教える。
4.予期しないことが起きると大変不安になる。
自閉症の人は予期しないことが起きると 大変不安になる。私たちは予期しないことが起きても どうすればよいかを想像して解決する。ところが自分の想像を超えるようなことが起きたら 私たちでも混乱する。予想もできなかったようなすごい地震が起きれば パニックになる。自閉症の人たちは些細な事でも不安になる。予期しないことをできるだけ起きないようにしてやる。予期しないことが起きるたびに自閉症の人は混乱し苦痛を感じ それを忘れない。
5.時間、空間という概念はとても苦手
時間の概念は難しい。新聞のテレビ欄をみて 時間を目で見えるようにしている 自閉症の人を何人も知っている。NHKの教育テレビをつければ、新聞のテレビ欄を見て時間がどのあたりまで来たかがわかるという。
空間の意味を知るのもむつかしい。機能が低い人は一つの場所を多目的に使われると 混乱する人が多い。勉強していた場所が 時間によって遊ぶ場所にかわる。機能が低い人には一つの場所を一つの目的だけに使うようにする。ここは勉強する場所ですよ。向こうのカーペットの色が変わっている所は 遊ぶ場所ですよ。
6.否定的に言わない。肯定的に伝える
自閉症のひとは否定的に言われると 次に何をしていいか想像できなくなる。禁止や否定は 自閉症のひとたちを深い混乱に陥れる。否定ではなく 「こうしたらよい」と肯定的に言う。肯定的なことを言うのは なかなか難しい。教育が上手な先生、ご両親は そういうことが出来る。緊急性を要するときに 否定的に言うこともあるが、その時には「これをこうしましょう」と即座に言う。どうすれば良いのかを 必ず強調する。(このことは頭の中に よく叩き込んでおくこと。)
目の不自由なお子さんがいれば、目が見えないことは 周りの人の心から離れない。耳が不自由なお子さんには 耳が聞こえないということを いつも心に留めている。自閉症のお子さんがいれば、「視覚的で具体的なでなければ理解できない」、「シングルフォーカス」、「想像力が乏しい」、「予期しないことを避ける」、「否定的に言わない。肯定的に言う。」 こういったことがとっさに出てくるようにならないといけない。教師であろうと 施設の職員であろうと ご家族であろうと 「専門家」たるもの 体に染みついていなくてはならない。
(次の頁に続く)