TEACCH親のためのセミナー・第2日

2日目は子供の評価・構造化の実習。子供をよく見つめて評価することはすべての出発点だと言う。

まず自分の子供の評価(アセスメント)からスタートする

評価には専門家によるものと普通の人でもできるものがあります。専門家による評価は確かに素晴らしいが、親は子供と毎日一緒に暮らしており 子供をよく観察することにより充分な評価ができる。親の評価は特別な道具やトレーニングなどは必要ない。しかもとても正確だ。

授業風景。右端はシャロットTEACCHセンター ジャックウォール所長。

まず子供に手を出さないで、じっくり見つめる。子供が出来ること、出来ることと出来ないことの中間(芽生え)、出来ないことを観察する。芽生え、強味、興味を記録する。

出来ること

芽生え(出来ることと出来ないことの間)

出来ないこと

洋服を着せようとした時に 両手を広げたが自分で着ることが出来ない。これは芽生え行動だ。芽生えはとても大事だ。芽生えは一人で自立してできる可能性がある。もう一つ大事なこと。子供は何に興味を持っているか。興味があることは 一所懸命やろうとする。

まず評価を行い 芽生えを見つける。子供にいかに興味を持たせ、一人で自立して出来るか。その中で大事だと思うことを目標として決める。出来なければ 目標を見直す。トライアンドエラーの繰り返し。

目標を決めたなら、

(1)まず1対1で教える。(親あるいは先生と一緒にやる)

(2)いつもの慣れた場所で一人で出来るようにする。

(3)環境を変えても 一人で出来るようにする

これがすべてだ。

子供の評価(アセスメント)及び構造化の実習

ジェイクは14歳の高機能自閉症児。ほぼ普通に話ができる。充分な指示を与えれば自分でやる。ジェイクに簡単な指示を与え、台所で3つの作業をやらせた。(1)サンドイッチを作る。(袋に入った食パン、瓶入りのジャムとピーナッツバター、ラップを用意)(2)スパゲッティの缶詰を開けてお皿に盛りつける。(3)粉末ジュースを作る。

最初はジェイクに手を出さないで作業を行わせ、芽生え、強み、興味についてついて観察する

初めにサンドイッチを作らせたが ピーナッツバターの中蓋の開け方がわからない。ジャムやピーナッツバターをパンにどのくらい塗って良いかわからない。ラップの箱を開け必要量を取り出すことが出来ない。かなりひどい、しかもまずいサンドイッチが出来た。

ジェイクは一見なんでもできるように見えるけれども 実際にやらせてみるといろいろなことが出来ないことがわかる。

次にスパゲティの缶詰を開ける。(なんとアメリカにはミートボールスパゲッティーなどがそのまま入っている缶詰があります!)ジェイクは缶詰の開け方がわからず、また中身をスプーンでお皿にうまく移せなかった。またサンドイッチも缶詰もジェイクは興味を示さなかった。

最後に粉末のジュースを作らせた。粉末ジュースが小さな袋に入っており、適量の砂糖と水を加え、よく混ぜてジュースを作る。袋の裏側には作り方が書いてある。

◇ 指示書を読む             できる(よく理解)

◇ 粉末ジュースの袋を開ける       できる

◇ ジャーに粉末ジュースを入れる     できる

◇ 砂糖のふたを開け、ジャーに入れる   できる

◇ 砂糖の量               芽生え(量がわからない)

◇ ジャーを水道に持っていき、水を入れる。芽生え(指示書に書いてなかった)

◇ 水の量                芽生え(量がわからない)

◇ ジュースをスタラーで混ぜる      芽生え

◇ 混ぜる回数              芽生え(何回混ぜたらよいかわからない)

ジェイクは文章で示したこと(指示書)は非常によく理解するが、 量の概念が非常に弱いことが分かった。(水と砂糖の量がまったく違っており、すごくまずいジュースが出来た。)しかし ジェイクは粉末ジュースに、とても興味を示した。これらの評価をもとに粉末ジュースを自分一人で(前回と同じ台所で)作ることを目標として設定した。

量の概念が弱い(芽生え)。文章はよく理解する(強味)。ジュースには興味がある。この結果より 粉末ジュースが一人で作れることを目標とした

改善したポイントは以下の通り。

◎ 砂糖はカップで量を計ってからジャーに入れる。カップには砂糖の量がわかるように テープで印をつけた。

◎ ジャーを水道の所に持って行き 水を入れるように指示書に明記した。

◎ ジャーには水の量がわかるように テープで印をつけた

◎ スタラーを混ぜる回数を指示書に明記した。

一回目でうまくいかなかった所を工夫して、再度(前回と同じ台所で)ジュースを作らせた。今度はほぼ一人でジュースを作ることが出来た。とてもおいしいかった。ジェイクはとても満足そうだった。

(この項終わり。3日目のページはコミュニケーションの講義と実習)