TEACCH親の為のセミナー・第1日(2/3)
一日目は自閉症、TEACCH, 構造化の講義。その後視覚的構造化の実習。筆者のチームはジェイク(14歳、高機能)の担当であった。
TEACCHの概要
1960年半ばにエリック ショプラー博士が提案。1970年に米国ノースカロライナ州内に3つのTEACCHセンターと10のクラスからスタート。1999年には7か所のTEACCHセンターと260クラスにまで発展した。
TEACCHには6つの基本的な考え方がある。
(1)自閉症を正しく理解する。
(2)経験にもとづいた方法を用いる。
(3)子供の評価(アセスメント)がすべてのスタート。
(4)プログラムは一人ひとり違う。
(5)20歳になって社会で自立して生活できることが目標。
(6)子供にとって親こそ最良の先生(共同治療者)である。
構造化とは (自閉症の子供にとっての「車いす」を作る)
(1) 物理的構造化(どこで なにを)
家庭や教室ではおやつ、遊び、課題など、一つの場所を一つの目的だけに使います。子供がその場所に行っただけで何をするかわかります。また「一つの活動が終わって次に移る」(トランジション)の場所を必ず設ける。トランジションには 通常スケジュールが置かれ、子供に一つの活動が終わり、次の活動が始まることを知らせます。
(2)スケジュール(いつ なにを)
スケジュールには子供の特性に合わせ、実物、絵、写真、写真と文字の組み合わせ、文字などを使う。スプーンは食事、ベルは課題など実物で示せば 子供にとって非常にわかりやすい。絵や写真はそれを見て何をするのか子供が理解出来ていることが大事です。スケジュールには 次の予定のみ、2から3つ先まで、一日分 などがある。また 固定式と持ち歩きができるものがある。
(3)ワークシステム(何を どのくらい、終わりはいつか 次に何を。お決まりのやり方)
子供が一人で出来るように、(1)何を(2)どのくらい (3) 終わりはいつか(4)次になにを行うのかを明確に示すための仕組みです。ワークシステムには(1)左から右へ(2)色、かたち、文字や数字でマッチングする。(3)文章による指示などの方法があります。
(4)視覚的な構造化とは(目で見てはっきりわかるように)
(1)視覚的指示。完成までの手順を目で見てわかるようにする。物を見ただけで何をするかわかる(一目瞭然)、切り抜きジグ、絵による指示、絵辞典、文章による指示、実物サンプルなど。
(2)視覚的な整理。子供の気が散らないように物と空間をわかりやすく整理してやる。物を別々の容器に入れる。やることをトレーなどにまとめて置いておく。余計な刺激が入らないように場所を限定する
(3)視覚的な明確さ。 重要なものや指示を強調して示す。色分け、ラベルなど
物理的構造化、スケジュール、ワークシステム、視覚的構造化は自閉症児にとって眼鏡や車いすと同じだ。現実の社会の中で生活する上で必要なものだ。足が悪い人に車いすが必要であるのと同じです。その人に車いすなしに外に出ろと言うだろうか。普通のひとでも眼鏡がないと生活に困る。普通の人でもスケジュール帖がなくなれば 今日一日何をしたらよいのか不安になります。マクドナルドに行けばあらゆる所で構造化されています。トイレのドアにはサインがある。サインがなければ本当にトイレかどうか不安になる。それと同じことです。
(次のページは視覚的構造化の実習について)